PMP試験におけるPMBOK・・・

PMPを目指す時に、PMBOKとは何かを考えておくことは有益だと思っています。PMBOKを読んでいくと、「悩ましい点」が出てきます。そこで、ちょっと整理しておきましょう。

まず、使えるかどうか、という疑問を持つ事自体がすでに間違いだと思います。数学が使えるか、ということと同じようにばかげています。PMBOKは単なる学問の一部のガイドに過ぎず、HOW-TO本でも社内マニュアルでも法律でもないわけです。この疑問が出る背景は、「今の状況をよくする何らかのツールが欲しい」という希望によります。簡単には、今のプロジェクトの状況を何とかできないかな、という願望です。

結論を言えば、そういう困った状況に対する即効薬にPMBOKはなり得ません。個人のプロジェクトマネジメント能力の基礎力になるだけだと思います。それはもちろん、多少の参考にはなることもあるでしょう。しかし「どうにもならない状況」を分析できても、PMBOKの対象となる範囲でない問題のほうが、たいていプロジェクトには重大な影響を与えています(上位マネジメント)。ということは、使えるツールか?というような考えはいくら推し進めても寂しくなるだけ、と、言えます。

PMPを目指す方は、まず、PMBOKは「使えるとか使えないとかそういう次元のことではない」と、考えてください。学問のガイドだ、ということです。ということは、あなたの目の前のプロジェクトにPMBOKが役にたつようになるには、個人→会社→ステークホルダーが、全体として、PMBOKを理解したとき、ではないでしょうか。

  • PMBOKは難解なのか?

PMBOKはわかりにくいとよく言われます。その言い分を列挙してみましょう。
・思考方法が日本人に向いていない
・日本語が難解である
・現実とかけ離れすぎている

一つ一つ見ていきましょう。まず、思考方法が日本人に向いていない点ですが、それはその通りだと思います。まずは、解説書に慣れた我々には、PMBOKは難解と感じるかもしれません。学問そのものであるため、それは、そのまま理解すれば良いのですが、全体構造を理解しないと、一つのプロセスの位置づけも理解できない構造でもあるため、なかなか取り組みにくい点はあると思います。PMPを目指す方は、そういうものだ、と思って、取り組む必要があると思います。

もっと積極的な人は、PMBOKにかわるものを作ればよいと思います。全体の構造を意識せずに頭から理解できるPMBOKのようなものを作ればよいのです。多数が支持すれば、デファクトスタンダードになるでしょう。

それともう一点、現場かの知恵を集約したものを学問と認めない妙な風土があることも原因かと思います・・・・・・これについては何ともし難いですね。

次に、日本語の問題ですが、確かに、要素成果物という造語は奇妙です。要素・成果・物と分解して、一つ一つ意味を考えると、本来の「でりばらぶるず」とはほど遠い間違った翻訳であることが容易にわかります。これは、日本ではプロジェクトマネジメントという学問が無かったことによります。そして今は、まだ、間違った約が標準となっている、という状態です。あと30年もすれば改善されるでしょう。私は単にデリバラブルズと表記すれば良いと思っています。最近聞いた話では、中国語版にもこういう問題があるそうです。そうなんでしょうね。。。。でも、中国語版PMBOKのほうが、正しい翻訳だなと思う点もあります(その逆もきっとあるのでしょう)。PMPを目指す方は、この点については、妙だと感じたら英語版で英語で理解しておけばよい、ということになります。

最後に現実との乖離ですが、これは、PMBOKが乖離しているのか、目の前の現実が乖離しているのか、ということになります。たいていは、目の前の現実が乖離している、ということになると思います。業界内でプロジェクトマネジメント能力が高いといわれる会社や、異業種などと自ら比較してみる以外に手は無いと思います。しかし、これが本当にわかるには転職しなければならないわけで、ちょっと難しい、ということになります。PMPを目指すだけであれば、現実問題が、PMBOKと本当に矛盾するか、を、考えて欲しいと思います。実際には、PMBOKで言うほど必要無い、あるいは、PMBOKには出てこないがそれ以上の事をやっている、という現実があるのだと思います。本当に矛盾している、という現実はあまり無いのではないでしょうか。

ということで、PMBOKはそもそも何か?を知っているものとして書いてしまいましたがいかがでしょうか。これからPMBOKに取り組まれる方は、以上のような「悩ましい点」を知っておいてから、読んで頂きたいと思います。

ところでこの説明、PMBOKPMBOK GUIDEを正確に区別していませんね。殆ど、PMBOK GUIDEの意味で書いていました(2005年1月補足)。